顧客獲得コスト(CAC)
顧客獲得コスト(CAC)とは、新規顧客を1人獲得するために平均してかかる費用のことで、ある期間の獲得関連支出(広告費、代理店費、ツール費、それを動かす人件費)の合計を、同じ期間に獲得した新規顧客数で割って算出します。
CACは顧客1人を獲得するのにいくらかかるかを示しますが、この数字だけでは意味を持ちません。CACが6,000円でも、顧客が生涯で30,000円使うなら健全ですし、一度だけ4,500円使って二度と戻ってこないなら採算が合いません。だからこそCACは顧客生涯価値と並べて読んで初めて意味を持ちます。成長が利益につながるかを決めるのはCAC単体ではなく、両者の比率です。支出を拡大する前に生涯価値をCACの3倍ほど確保したいというのが運営者の一般的な目安ですが、適切な倍率は利益率、回収期間、そして費用を回収するまでにどれだけ資金を寝かせられるかによって変わります。
誠実に計算するなら、広告の請求額だけでなく、獲得に紐づくすべての費用を含めます。代理店への月額報酬、ソフトウェアの利用料、クリエイティブ制作費、アフィリエイトへの支払い、そしてそれらを運用する担当者の人件費は、すべて分子に入ります。これらを除外すると数字は見栄えよくなりますが、成長の本当のコストが隠れてしまいます。また、ブレンドCAC(オーガニックで見つけてくれた顧客も含めた、総支出を総新規顧客数で割ったもの)と、有料CAC(支出が生み出した顧客だけに対する支出)を分けて考えると役立ちます。両者は異なる問いに答えるものであり、混同するとお金が実際にどこで効いているのかが見えなくなるからです。
自然派コスメを販売するShopifyストアを考えてみます。あるひと月にMetaとGoogleの広告に900,000円、代理店への月額報酬に180,000円、メールアプリとレビューアプリに45,000円を使い、150人の新規顧客を獲得したとします。有料CACは1,125,000円を150で割って、顧客1人あたり7,500円です。初回注文の平均が6,750円で利益率が60パーセントなら、ストアは初回購入では赤字であり、購入者が再注文して初めて利益が出ます。このときの運営者の対応は、広告をそのまま止めることではなく、初回注文額、リピート率、サイト内のコンバージョン率を高め、同じ支出をより早く回収できるようにすることです。
信頼とコンバージョンは、CACに静かに効くてこです。同じ広告費でも、ランディングの体験のコンバージョンが良ければより多くの顧客を獲得できます。そしてコンバージョンは、買い物客が主張を鵜呑みにするのではなく、レビューや裏付けとなる情報を通じて確かめられるときに上がりやすくなります。摩擦を減らし信頼性を高めることは、ファネル上部の予算に手をつけずにCACを下げます。
いまでは、有料支出のモデルの外側に完全に位置する獲得チャネルが存在します。AI回答エンジンです。買い物客がChatGPTやPerplexity、Google AI Overviewsに商品の推薦を尋ねたとき、その回答があなたのストアへ送り出す引用は、実質的に限界費用ほぼゼロで獲得した顧客になります。こうした引用を得られるかどうかは、構造化された商品データ、本物のレビュー内容、そしてモデルが自信を持って引用できる明確な主張にかかっています。購入前の調べ物がこうしたツールの中で始まることが増えるにつれて、そこでの可視性は、支出を有料プラットフォーム間で移し替えるのではなく、ブレンドCACそのものを下げる数少ない方法の一つになります。